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2019/06/17
コラム

住み慣れた地域で暮らし続けるための「認知症バリアフリー」

厚生労働省では認知症になった高齢者でも、
住み慣れた地域で暮らし続けることができるような環境を整備することを目指し、
認知症官民協議会を2019年4月に発足させました。

 

認知症でも不自由や不便を感じることが少ない生活空間や環境のことを、
認知症バリアフリー』と呼んでいます。

厚生労働省は各企業の今後の取り組みについて話し合いを行う懇談会を企画し、
第1回目が2019年3月8日に、第2回目が3月25日に開催されました。

 

「認知症バリアフリー」とは?

認知症バリアフリーとは?

 

認知症になっても住み慣れた地域で暮らし続けられる生活環境が整備されていること
それを認知症バリアフリーと呼びます。

認知症になると、それまでは普通に行ってきたことが難しくなったり、
不可能になってしまうことが少なくありません。

認知症の当事者の立場に立って、生活環境の中でできる部分を改善していくのが、
認知症バリアフリーの目的となっています。

 

具体的には、移動手段の確保や金融機関や小売店へのアクセス方法の工夫
各種サービス利用時の認知症の方への配慮がなされることなどがあげられます。

さらに、オレオレ詐欺に代表されるような消費者をターゲットとした、
詐欺被害を最小限に抑えるための対策なども、認知症バリアフリーの一環です。

厚生労働省では、全国規模でこの認知症バリアフリーを進めていく
という施策を示していて、大企業の幹部との懇談会の開催もしています。

それぞれの企業が持つ強み提供しているサービスを中心として、
今後は認知症バリアフリーに大きく貢献することが期待されています。

 

こうした認知症バリアフリーの取り組みは、企業や行政だけの話ではありません。
高齢者自身や周囲の家族にもできることがたくさんあります。

本人にできること

認知症の発症や進行を遅らせるために、
脳や筋肉を日常的に意識しながら使い、間接的に認知症対策をすることができます。

家族や周囲の人ができること

認知症への理解を深めたり、
実際に研修に参加して「認知症サポーター」になることもできます。

 

「バリアフリー」と聞くと最初に思い浮かぶのは、段差を無くしたり、
高齢者や障がいを持つ人が使いやすい設備を整えるといったハードの面でしょう。

こうした設備は病院や駅をはじめ、スーパーや歩道、
公園などでは必須の取り組みと言えます。

 

しかし、住まいという視点で認知症バリアフリーを考えたとき、
もしかしたら段差や階段などの「障害」が無いことで衰えてしまう能力があったり、
環境の変化が認知症の人のストレスになることもあるかもしれません。

 

認知症の人にとって、住み慣れた地域で安心して暮らす為になにが必要か
を考えることが、「認知症バリアフリー」にとって大切なことなのかもしれません。

 

各企業の取り組みその①

三菱UFJ信託銀行の取り組み「みらいのまもり」

 

認知症バリアフリーの取り組みの一つに、
金融機関へのアクセス利用方法の見直しや改善があります。

愛知県名古屋市においても、認知症の診療ができる病院が増えていたり、
各施設でバリアフリー化が進むなど、取り組みが進んでいます。

 

例えば、名古屋市に複数の支店を展開している三菱UFJ信託銀行でも
認知症バリアフリーについての取り組みを開始しました。

 

三菱UFJ信託銀行が提供する金融サービスは、
預金や市場運用など通常の銀行業務の他、相続や不動産、
証券代行や受託財産など財産に関する信託業務もあります。

 

これらの金融サービスは、顧客との長期にわたる信頼関係が基盤なので、
顧客の幅広いニーズにこたえることによって成立しています。

 

もしも顧客が認知症を患ってしまった場合では、
認知機能が低下するために資産管理に大きな影響を及ぼしてしまいます。
認知機能が低下するということは、判断能力に支障をきたす恐れがあり、
将来のための貯えを考えずに使ってしまったり、
将来を見据えた資産形成が出来なくなってしまう。

目先の利益を追うことで資産の寿命が短縮化するなどの事態が懸念されます。

 

そこで三菱UFJ信託銀行では、認知症バリアフリーの一環として、
解約制限付きの信託商品みらいのまもり」の提供をスタートしました。

 

これは、一定の目的のみに対して支払いを行うという信託商品で、
契約者本人でも簡単には解約することが難しいという特徴があります。

認知症にかかった場合、本人自身が自覚していないケースが多いため、
万が一に備えた機能をいくつか持った信託商品となっています。

 

特徴 その① 

原則的に中途解約することができないという点があります。
本人だけで銀行の窓口に足を運んでも、
しっかりした判断能力に基づく意思決定であることが確認できなければ
解約できない仕組みとなっているのが特徴です。

 

どうしても解約する必要がある場合には、
事前に指定した3親等以内の親族か、弁護士や司法書士から
指定された人物が銀行へ同行するという作業が必要となります。

 

特徴 その② 

みらいのまもりは使い道が限定されているのも特徴です。
基本的には、10万円以上となる額な医療費の支払いに加えて、
老人ホームへの入居一時金など、
はっきりと使い道が分からなければ使用ができません

 

特徴 その③ 

信託口座は専用の口座で管理されるという点があります。
こうした取り組みは、認知症だと自覚することなく病院に行けない
高齢者の変化に気づき、家族や地域そして専門家とをつなぐ役割を、
金融機関という立場で行うことを目的とした
認知症バリアフリー対策となっています。

 

各企業の取り組みその②

イトーヨーカドーの取り組み「認知症サポーターの養成」

全国に160店舗を展開する総合スーパーのイトーヨーカドーもまた、
認知症バリアフリーへの取り組みを開始した企業の一つです。

認知症の高齢者も足を運ぶことが多いイトーヨーカドーでは、
認知症の疑いがある利用者に対しては、
適切な対応ができるような社員教育を行うとともに、
地域のコミュニティと連携を取りながらサポート体制を整備しています。

 

認知症は見た目では判断しにくいだけでなく、
本人との会話だけから判断することも難しいケースは少なくありません。

そのため、従業員に対して認知症の利用者への対応を教育するとともに
認知症サポーターを養成するなどの取り組みを行っています。

 

また、地域住民への認知症に対する理解を深めることを目的として、
健康診断や相談窓口などを設けたり、
健康増進をテーマにしたイベントを開催したり、認知症カフェを設置して、
認知症で悩む人や家族が気軽に利用できるサービススペース
設けるなどの対策もしています。

 

また、全国に35,000人以上の従業員を抱える大企業という強みを生かし、
従業員として働く職員の認知症を早期発見するための
システムづくりにも取り組んでいます。

 

おわりに…

厚生労働省が打ち出した認知症バリアフリーの政策は、
たくさんの企業がそれぞれの特徴や強みを生かし、
それぞれの立場から政策をサポートすることによって、
少しずつ進められていきます。

行政や企業が認知症バリアフリーの政策を進めるのと同時に、
私達市民は認知症への理解を深めると同時に、
認知症にならないための努力や工夫を継続することがとても大切です。