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2018/10/07
コラム

高齢障害者の新たな負担軽減措置

障害福祉サービスを受けていた方が65歳になると、基本的には介護保険サービスへと移行されます。

その結果起こる影響を『65歳問題と呼んでいます。

 

ここで起こりうる問題とは、費用面での負担が増加したり、受けられるサービス内容が変わるなどして生活に影響が出ることです。

今年11月5日、厚生労働省が出した介護保険最新情報のVol.689では、介護保険への移行に伴う高齢障害者の利用者負担に関する支援措置について触れられました。

その現状と動向について詳しくみていきましょう。

 

障害福祉から介護保険へ。移行に関わる問題点とは

 

原則65歳以上の方で、日常生活に支障があると認定された場合に介護や支援を受けられるのが介護保険サービスです。

そして、それまで障害福祉サービスを利用していた人の場合には、65歳に達すると内容が重なるサービスについては介護保険が優先されることになります。

しかし、この移行にはさまざまな問題が含まれています。

 

障害福祉から介護保険へ。移行に関わる問題点

問題点の一つ目に挙げられるのは、介護保険サービスを受けることでこれまで以上の金銭的な負担が発生する可能性が出てくるという点です。

非課税世帯であれば障害福祉サービスにおいては利用者負担が発生しないのに対し、介護保険サービスでは1割を負担しなければなりません。

中には、負担増加を懸念して、介護保険サービスを開始する場合に必要な介護申請を避けたいと考える人もいます。

 

障害福祉サービス支払い能力に応じて限度額の決まった

応能負担”であるのに対し、介護保険サービス受けたサービスの分だけ支払い額が増える応益負担

であるという違いが、移行に伴って利用者やその家族を圧迫する原因となっているのです。

 

二つ目の問題点は、障害福祉サービスから介護保険への移行に伴う、サービスを受けられる時間やその内容の変化です。

介護保険と障害福祉サービスの併用は可能ですが、サービス内容が重複していると判断されるサービスについては介護保険サービスが優先となります。

 

また、介護保険サービスの支給上限量だけでは十分に支援が行き届かない場合には、障害福祉サービスを上乗せして利用できることになっていますが、受理の要件として介護度が高いことが条件になっていたり、上乗せが受理された場合であっても、そのサービス支給量は各自治体の裁量に任されているためバラつきがあります。

 

利用する制度が変わることで、これまでよりも支援を受けられる時間が短くなってしまった、障害福祉では支援対象となっていた社会参加のための支援が介護保険では適用外であるなど、これまでの生活を維持するために必要とされるサービスと提供されるサービスのバランスが崩れてしまうことも起こりうるのです。

 

例えば、移行によって在宅支援の支給量が減った場合を見てみましょう。

障害福祉サービスではヘルパーに調理してもらうことができていたものが、支給量が減ったために介護保険サービスでは難しくなってしまうことがあります。

もちろん、代替手段として配食サービスを利用したり、外食をするという別の方法がないわけではありませんが、その時の個人の体調や状態に適切かつ迅速に対応していくのは配食サービスや外食では限界があります。

 

また、入浴の介助を行う訪問入浴サービスも、65歳を機に介護保険サービスに移行します。

しかし、そこで介助するヘルパーは高齢者の介助における知識や経験は豊富にあったとしても、障害者の介助については知識も経験も浅い、ということは良くあることです。

こうした事情やそれに伴うストレスなどから、利用者が体調を崩してしまったという事例も実際にあるようです。

 

平成18年に「精神障害者ホームヘルパー養成特別研修」が廃止されたことを受けて、介護職員初任者研修(旧:ホームヘルパー2級)修了者も障害者に対するサービスを行えるようになるなど変更がなされています。

しかし、実際に現場に赴く介護保険事業所に所属するヘルパーが、障害に関する専門知識を十分に持っているとは限りません。

これは、各種ヘルパーの統合や、高齢者介護の資格取得者が、障害者についての研修を短期間受けただけでサービスを提供できるようになったということが背景にあるといえそうです。

 

高齢障害者のための負担軽減措置とは?

 

以上のように、障害福祉から介護保険への移行にはさまざまな問題点がありますが、改善するための措置もとられており、その一つが高齢障害者のための負担軽減措置です。

2016年に改正障害者総合支援法が成立し、その翌年の6月には厚生労働省によって社会保障審議会障害者部会が開かれ、利用者の金銭的負担を軽減する要件が取りまとめられました。

 

また、障害福祉サービス事業所が介護保険事業所に指定されやすくすることで、より円滑に利用できる仕組みも整えられました。

 

高齢障害者のための負担軽減措置

 

さらに、2018年には高齢障害者の新たな負担軽減措置が取られるようになりました。

これが、冒頭で触れた今年11月5日に厚生労働省によって出された介護保険最新情報Vol.689です。

その内容は、高額障害福祉サービス等給付費についての軽減措置についてです。

 

前述したように、障害福祉サービスで受けていたものが介護保険サービスで受けられない場合には、障害福祉サービスを継続したり、介護保険サービスの不足分を障害福祉サービスで上乗せして受けることができます。

しかし、上乗せを行うことで介護保険のサービス費に加え、障害福祉サービス費も支払わなければならない利用者の負担を考え、自己負担額に上限を定め、限度額を超えた場合に差額を償還することとしたのです。
ただし、差額償還の対象となっているのは一定の条件を満たしている人に限られており、所得が一定以下、または生活保護を受けていることなどの所得制限に加え、障害支援区分が2以上であること、障害福祉サービスに係る支給決定を65歳に達する前日までの5年以上受けていること、65歳以降に障害福祉サービスで受けていたものと同様の介護保険サービスを受けていることなどが挙げられています。

 

このように、障害福祉から介護保険への移行には少なくない問題があります。

介護保険サービスの円滑な利用を進めるため、障害福祉サービス事業所が介護保険事業所の指定を受けやすくする「共生型サービス」についても話題となっているなか、障害福祉と介護保険の動きについては、今後もあわせて注視していく必要があるでしょう。