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ケアまどニュース
介護サービスの地域性
超高齢社会の日本にとって、高齢者の介護の問題は大きな社会問題となっています。一概に介護と言っても介護の地域性はそれぞれ異なるものです。
ここではまず、国が目指す介護の姿とはどんなものかを見ていき、都市部や過疎地の現状、需要と供給のバランス、今後の展望について考えます。
国が目指す介護の姿
国が目指す介護の姿は、全ての高齢者が尊厳を重んじられた自立した生活を送れるようにすることです。また、高齢化問題には、高齢者自身や高齢者のいる家族だけではなく、社会全体で取り組むことが必要となります。
介護保険制度では、高齢者が住み慣れた地域で一生を終えることができるように医療や介護などのサービスを地域の中で継続的に受けられるような仕組みの確立を目指しており、これは「地域包括ケアシステム」と呼ばれます。
従来の高齢者の介護は、要介護高齢者を1つの施設等に集めて、そこで介護や医療を実践するというものでした。ところが、3~4人に1人が65歳以上という状況ではこの方法では限界があります。また、高齢者の自立や尊厳を損なう過剰介護も見られました。
そのような状況を受け、「地域包括ケアシステム」は高齢者を集団でケアするという従来の方法ではなく、予防と日常生活支援を重視していくことを目的としています。このシステムでは住居、医療、介護を1か所に集中させるのではなく、地域の一定の範囲に分散させてネットワーク化し、24時間連続したサービスを受けられるようにすることを目指しています。
また、ケアマネジャーが配置されていて、ひとりひとりの高齢者の状況に合った支援プランを作成しています。「地域包括ケアシステム」を円滑に実施するためには地域のボランティアや病院だけでなく、住民や民間企業などの協力も必要です。
また、大規模な施設を建設するのには費用が掛かり、人件費等の費用もかさみます。入居する側も費用の負担が大きくなりますし、そうした施設では多様化する介護の需要に対応するのも難しくなっています。それで、政府では必要なサービスが30分以内に提供されることを想定した生活範囲の中で、高齢者がスムーズに介護サービスを受けられることを目指しているのです。
そのため住宅型以外にも、デイサービスや在宅サービス、日常生活の支援などのサポートが行われています。日常生活支援には24時間の呼び出しシステムや買い物、食事の準備などのサポートが含まれます。
都市部の介護の現状
厚生労働省が以前に発表した2025年に向けた介護人材にかかる需給推計を見ると、2025年には介護労働者が37万人以上不足すると予測されています。人材不足は都市部が最も深刻で、1万人以上の需給ギャップがあるのは東京、大阪、埼玉などです。
介護職は全国的にも離職者が多く、1年以上3年未満で離職する人たちが全体の離職者の7割を超えています。こうした状況があるため都市部では介護職員が不足し、利用者がきめ細やかなケアを受けにくくなっているのです。
今後は都市部での高齢化がさらに進み、2020年前後には前期高齢者(60~74歳)の数よりも後期高齢者(75歳以上)の数が多くなると予想され、東京では2025年には後期高齢者が2000万人になると予想されています。それで医療施設や老人ホームなどの介護施設が不足してくることは必至です。
病院や福祉施設を集約化したり介護職員を増やすために外国人を採用するなどの取り組みが必要になってくるでしょう。
また、平成27年版の『厚生労働白書 人口減少社会を考える』を見ると、東京、埼玉、神奈川、千葉そして大阪などで全国平均よりも出生率が低くなっています。ですから、高齢者の独居、後期高齢者の夫婦の世帯がますます増えていくことが予想されます。
高齢者の4割は在宅で過ごすことを希望しているという調査結果もあるので、その結果、高齢者が高齢者を介護する「老老介護」や、認知症の齢者が認知症の高齢者を介護する「認認介護」が増加していくと考えられるのです。体力が衰えている高齢者が介護するので介護者がけがをしたり、認知症の高齢者が薬を飲ませる時間やオムツ交換の時間を忘れてしまうといったことも起こります。
過疎地の介護の現状
過疎地においては高齢者の比率は高いものの、絶対数は少ないです。また、都市部では将来の介護職員と介護を受ける側の需給ギャップが1万人を超えるとされているのに対して、佐賀県では605人、島根県では326人と、需給ギャップはそれほど大きくありません。それでも、若者が都市へ流出してしまうため介護職の担い手が不足しています。
過疎地では現在、介護職に就いている人も高齢化しているので、将来的に地域の中だけで介護職員を賄うのは不可能です。このため多くの過疎地域では介護職に移住してきてもらうための政策を推進しています。
移住してくる介護職の人に移住の費用を補助したり、住居探しにも協力しています。また、移住してきた介護職員が地域の生活に早く慣れるように地元住民との交流をセッティングする自治体もあります。
こうした取り組みが成功している過疎地もありますが、地域外からの介護職員を思うように確保できない地域もあります。全国的に介護職に就く人が少ないためという理由もありますが、過疎地独自の問題もあるでしょう。
一般的に過疎地では外部からの人を受け入れにくい、地元有力者の血縁でなければ不利になる、外部の人との付き合いを制限されるといった傾向があります。こうした傾向が根強いために若者は地元を離れていきますし、新たに移住してきた介護職員が地域に留まるのも難しくしているのです。
また、介護職に就く人の8割は女性ですが、閉鎖的な過疎地では今だに男尊女卑の傾向があり、有力者とつながりのない女性は特に不利になります。介護職員である女性が地元を離れると、高齢者を介護できる専門職の人がますます減ってしまいます。
そこで、過疎地域の自治体の中にはシングルマザーを手厚く支援して保育料や医療費を優遇し、町営住宅に住めるようにしたり、定住コーディネーターにいろいろな相談ができるようにしているところもあります。また、過疎地域では介護職員が不足するため、地域包括ケアシステムに基づいて、「健康づくり・介護予防」に積極的に取り組んでいるところも少なくありません。
健康診査の受診を徹底したり、高齢者の健康に対する意識を高めるようにしています。例えば、「長生き手帳」や「元気手帳」を配布して高齢者自身が自分の健康管理を行えるようにサポートしています。都市部には若者が集中しますが、職業の選択肢が多いために介護職に就く人は限られます。その上、高齢者の世帯や独居の高齢者が増えるため、介護職員の不足は深刻化しているのです。
過疎地でも介護職に携わる人が高齢化している、閉鎖的な傾向のために外部からの介護職員が定着しないという問題が見られます。また、散在している高齢者の居住問題や自治体の財政負担、職員の待遇なども問題です。政府では離職した介護職員に職場への復帰を促すために介護職の復職支援を行っています。
「再就職準備金貸付事業」では再就職にかかる費用を貸し付けています。
また、介護福祉士を目指す学生が介護福祉士養成施設で学ぶための費用も貸し付けています。
こうした取り組みには価値がありますが、根本的な解決のためには、若い世代が高齢者とともに住み、看取りをすることの尊さを知ることや、過疎地での閉鎖的な慣習の改善なども求められるでしょう。
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