

生活を送る上で、さまざまな悩みや困難にぶつかるのはよくあることです。
ただしその解決策を見いだせなければ生活することが難しくなり、困窮してしまうことは目に見えています。
高齢者の介護や“中高年の引きこもり”や、“子育てと介護のダブルケア”など、深刻な事態に陥っている人は少なくありません。
そんなときにどんな相談でも受け入れてくれる「断らない相談支援」という取り組みをご存知でしょうか?
愛知県名古屋市ではこれからの課題ではありますが、すでに実施をしている自治体もあり、今後その動きは全国に拡大されていきそうです。
そもそも相談支援とは、障がい者の方が自立して生活を送れるようにサポートをする制度でした。
介護保険でいえばケアマネージャーのような存在で、利用者の状態や希望に合わせたケアプランを作成し、QOLを高めることができるサポートを行っていました。
しかし近年では、役所の相談窓口に寄せられる相談が実に多様化してきています。
中高年の引きこもりや高齢者の老老介護、介護施設や老人ホームに入居できない親族の介護と育児のダブルケアなどの問題。
多額の借金、家賃が払えないなどの住居に関する問題、定年後の再就職など、生活困窮は経済的な面だけではなく、さまざまな要素が絡み合っていることが分かったのです。
しかしながら、既存の社会福祉制度ではカバーできないケースが多く存在するのが現状です。
そこで、厚生労働省の地域共生社会推進検討会はいかなる相談も「断らないこと」を前提とした総合的な支援体制を構築することを目標にしていると発表しました。
相談に行ったのにしゃくし定規の回答しか得られなかったり、見下すような職員の態度に腹が立ったという話はよくあることです。
中には窓口をたらいまわしにされたが結局解決できなかったなど、役所の相談窓口でこのような経験をされた方は少なくないはずです。これでは抜本的な解決案など全く生まれてきません。
1つの窓口で多様化する生活困窮者の問題を丁寧にヒアリングし、解決できる方法を一緒に探す…
このような取り組みを行うことが「断らない相談支援」の目指すものであり、ワンストップで対応が可能になることを目標としています。
断らない相談支援を行う上で、「8050(はちまるごーまる)問題」がもっとも注目すべき問題としてあげられました。
これは“80代(高齢者)の親が、引きこもりを理由に50代(中高年)の子供を養う”という問題のことです。
ここで注目するのはさまざまな要素が絡み合っているということです。
高齢者の生活維持ができるか、子どもの就労支援は可能か、介護の問題はないか、引きこもりに対する支援は必要かなど、単に高齢者と中高年の引きこもりだけでは見えてこない問題が入り組んでいるのです。
発端はこの「8050(はちまるごーまる)問題」でしたが、介護と子育てのダブルケア問題や、高齢者同士が介護を行う老老介護など、
制度の普及を前にして、既に解決しなくてはいけない問題は見えてきているものも多いのです。
ニュースで報道される、老々介護による介護疲れや、引きこもりの子供などに対する傷害・殺害事件や心中などの問題は、この「8050(はちまるごーまる)問題」が発端となって明るみに出た現代の問題点だと言えるでしょう。
自治体の中には「断らない相談支援」を既に実施しているところもあります。
神奈川県の座間市役所がその1つです。2015年から始められた制度がどのような取り組みが行われているのか、全国のモデルケースとして注目されています。
対象者 :生活困窮者本人、もしくはその家族
相談内容 :経済問題・介護・引きこもり・子育て・就職など生活全般
目標 :生活困窮者の自立支援のためのプラン作成
担当部署 :生活援護課・自立サポート担当
相談料 :無料
財源 :介護・障がい者・子育支援、生活困窮者の自立支援などは、
使途が限定されている国からの交付金を使用
※今後、状況に応じて横断的に使うことができるようなルールに改正
「断らない相談支援」の種類には全部で6つのパターンがあります。
生活困窮者に必要な支援をヒアリングし、自立に向けたプランの作成を行ってくれるサービスで、1つ1つ丁寧にヒアリングを行うことで、根本的な解決を目指してくれます。
働きたくても働けない人や、職先が見つからない人などに就労相談員が仕事の探し方などをサポートしてくれます。
職安などで探したけれど仕事がなかったという人や、問い合わせの電話で断られたという人でも相談ができます。
働いて安定した収入を得るための資格取得サポートや、就労に対する準備を行うための職場体験実習などの就労準備支援というサポートも可能です。
衣食住について問題を抱えている人を対象に、住まい探しなどについてサポートをしてくれます。
離職などで住居を失った人に対する支援としては住居確保支援金の支給もあります。
借金問題などでお困りの方を対象に、生活を再生するためのサポートなども行ってくれます。
更にサポートが必要な場合は、NPO法人などとも協力し、少しでも相談者が問題解決できるように努めてくれるのは実に心強いですね。
では、「断らない相談支援」はどのような流れで行われるのでしょうか。
①初めに面談を行い、現在抱えている悩みや困りごとなどを聞き取りする。
②ヒアリングした現在の状況から問題点や課題を分析し、相談者と一緒にこれからの生活再建に向けた支援プランを作成する。
③実際に、支援プランに基づいたサービスの提供を開始する。
④開始後は支援の状況を経過観察し、過不足がないかなどチェックする。
⑤相談者が安定した生活を送れるように、随時サービスを調整する。
相談に関してはこのように徹底した「PDCA」で相談者をサポートしてくれます。
厚生労働省は、
「支援を必要とする人の60%は問題を2つ以上、34%は3つ以上抱えている」と発表しています。
1つの相談を丁寧に聞くことで、更に抱えている問題や根本的な問題が浮き彫りになることが多いのです。
「その件は担当外です」というたらい回し対応ではなく、
「どんな相談でも受け付ける」
ということが、本来の相談援助になると提唱しているのです。
断らない相談窓口を設置していく上で必要不可欠なのが相談支援員の確保です。
さまざまな問題に精通した相談支援員の確保と育成が必要になります。
通常役所関係は自分の担当外の仕事は行いません。
ただし断らない相談支援の場合は、他部署や他団体(NPO法人など)との連携が必須になりますし、柔軟な交付金の確保も大切な問題となります。
役所へ行くと「たらいまわしに合うから」と、相談になど行かないという高齢者の方や生活困窮者の方がいます。
今までアクションを起こしても何の解決にもならず、反対に心が折れるような対応をされた経験を二度としたくないと考えているのです。
そのような対応では本来の相談とは言えません。
親身になって、どうすれば自立ができるのか、どうすれば問題を解決することができるのかということを導き出してくれる…そんな窓口があれば、きっと問題を解決して自立していける方も多いのではないでしょうか。
もちろん担当者は専門的な知識や幅広い見識が必要になります。何かを聞かれても内容が理解できなければアドバイスはできません。
そのためには国を挙げての体制強化や自治体の自助努力などが必要不可欠となってくるのです。
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