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進化する『AI』と介護2018年09月10日

介護ロボットという言葉には、医療機器のような法的に明確な定義は存在していません。おおむね人間の形をしたものだけを想像する人もおり、実際そんなロボットもいます。ですが人によってその定義は異なり、定義などせずに「コンピュータの入った、なんとなく目新しい介護機械」くらいのイメージで使っている人も少なくありません。
経済産業省と厚生労働省が2012年に策定した「ロボット技術の介護利用における重点分野」は、後者のような幅広いイメージで捉えています。その後、2016年に介護の現場とロボットの開発企業が協議して、現場の需要を反映した介護ロボット開発の提案内容をまとめる組織「ニーズ・シーズ連携強調協議会」が設置されました。
2017年6月9日には「未来投資戦略2017」が閣議決定され、これを受け、2012年の「ロボット技術の介護利用における重点分野」は改訂されて6分野がリストアップされることとなりました。ロボットによる介護のありかたは、ますます多様化してきています。

 

ロボットによる身体的介護補助

ai ロボットと聞いて一般の人が想像するのが、まるで人間のような形をして、人間のできることはなんでも手伝えるというロボットです。理化学研究所が2015年にそのようなロボット「ROBEAR」を開発しました。これは2011年8月に作られた「RIBA-Ⅱ」の後継機で、下半身こそ歩行ではありませんが、腕の自由度が高まっており、横抱きのみならず、立っている人を抱きかかえて介助するなどができるようになっています。
ですが現時点ではもっと部分的なものが主流です。
たとえば介護者が装着することで、その筋肉の動きをサポートするというパワーアシストを目的としたスーツ。例えば有限責任事業組合LLPアトムプロジェクトが開発した「ウエストサポート」というスーツです。モーターや油圧などでは生じがちな「制御不能なほどの力」が加わらないように、空気圧を使ったパワーアシストを使っています。マジックベルトで簡単に着脱できる上、筋肉センサーは内蔵されており個別に貼る手間がないのも、現場にはありがたいポイントです。
同じ装着型でも、介護者ではなく利用者が装着することで足腰の弱まった人などが歩行できるようにするアシスト装置もあります。たとえば株式会社CYBERDINEのHALシリーズは下半身装着型ですが、人間が体を動かすときに脳から筋肉に流れる生体電位信号をセンサーで感知し、意思に従った動作を実現するというものです。単に機械が動いてくれるというだけではなく、生体電位信号に基づいた動きを繰り返すことで、脳神経・筋系のつながりが促進され、リハビリ効果もあることが期待されています。

 

歩行支援では装着型の外に、捕まって歩くタイプのものもメジャーです。例えばRT.ワークス株式会社の「ロボットアシストウォーカー」RT.1およびRT.2。斜面の状態に合わせて最適な進み方で歩行をアシストし、もし手を放してしまった時には自動停止します。2は通信機能がないのが1との最大の違いです。なんで2の方が機能が少ないのかというと、通信機能が付いた装置は介護保険が適用されないために、適用可能な2を新たに発売したとのこと。介護ロボットが制度のことまで考えて設計されていることが分かります。

 

AIによる送迎システム、ケアプラン作成

介護で意外と大変なのが毎日の送迎業務。付随業務も多く、手間と時間が馬鹿になりません。日によって誰と誰を送迎するかが異なっており、効率化が運転手の経験に依存する部分も多いと、かなりの負担になっています。
パナソニックは、AIを用いた通所介護の送迎業務を効率化するクラウドシステム「ドライブボス」を開発しました。利用者の情報やその日の条件などを元にして、AIが合理的な送迎計画やルートを提案します。到着時刻・出発時刻もワンタッチで記録でき、事業所に帰還すると送迎の実績を書いた日報の原案が自動作成されるというシステムです。パナソニック以外にも、国内自動車メーカーなどが同種のシステムを売り込んでいます。

 

こちらもパナソニックの製品ですが、ケアプランをデータから自動作成するAIが注目を集めています。兵庫県宝塚市のデイサービス「ポラリス」と共同して実証実験を始めており、2019年度に事業化する計画です。
ポラリスは運営するデイサービス付き賃貸住宅で、ベッドセンサーなどの各種センサーや食事・排泄などの自己申告ボタンを設置。人間の生活データや、デイサービスの記録などを継続的に採取してクラウドに蓄積したうえでケアプランをAIに作成させています。
パナソニックでは2025年には100億円以上の事業規模に拡大可能と考え、サービス開発に力を入れていく予定です。

 

株式会社ウェルモも、「ミルモ」「ケアプランアシスタント(CPA)」を開発しています。CPAは2016年から開発がスタートしたケアプラン作成支援用のAIエンジン。AIによって、特に負荷が大きいとされている「初回のケアプラン作成」を支援します。
「ミルモ」の方は、介護の地域資源情報プラットフォームです。地域の介護情報を集約して、ソーシャルワーカーやケアマネージャーが、各利用者の必要に応じた介護サービス内容の提案を的確に行うことができるようになります。すでに東京や福岡などで、1万件以上の事業所データを提供。特に福岡では、同社によるとシェア78%にのぼるそうです。

 

実際導入している事例

では、実際の現場では評判はどうなのでしょうか。
ここで福岡県に目を向けましょう。なぜかというと、政府が推進する「国家戦略特区」――地域や分野を限定して大胆な規制緩和や税制優遇をする実験的特区のこと――に「高年齢者の活躍や介護サービスの充実による人口減少・高齢化社会への対応」というテーマで選ばれているのが同県北九州市なのです。同市は様々な施設に「介護ロボット実証施設」の指定を行い、実用試験に取り組んでいます。「サポートセンター門司」がその1つ。様々なロボット・AI機器を導入しています。そのいくつかをご紹介します。

 

まずは株式会社ノイフィスによる移乗介護のロボット「マッスルスーツ」。先述したウエストサポートと似た商品で、空気圧を使っている安全設計も類似しています。背中に背負うものなのですが、被介護者を持ち上げるときや中腰の姿勢になったときなど、腰に力がかかるときに負荷を軽減するものです。使用した介護者によると、利用者を抱えたときの負担感が半分ほどになるとか。

 

株式会社安川電機の移乗用アシスト装置は、利用者を側臥位(横向きに寝る)にしてスリングシートを敷き、装置をベッドに挿入してアームで持ち上げた後、回転して車椅子に座らせるものです。寝ている利用者を車椅子に座らせるという言葉だけでは簡単な作業も、実際に人間一人を持ち上げて行うのは大変でした。2人がかりの作業をこの装置の介在で一人でできるようになります。

 

リーフ株式会社の「Tree」は歩行訓練用のロボットです。予定する速度や歩幅の入力で、次の一歩の踏み出し位置をモニターに表示し、歩行リズムも音声で伝えます。モニターを見ながら歩くことで自然と姿勢も改善されるという配慮もあります。

 

さらにロボットらしいのが、富士ソフト株式会社の「PALRO」というコミュニケーションロボット。人間風のスタイルで、サイズはまるで玩具のようですが、会話・ゲーム・歌・クイズ・体操などの機能が備わっています。実際、施設ではロボットとの会話だけでなく、ロボットを介して利用者同士の会話が弾む効果も見られるとのことです。

 

 

このように様々なロボットが介護の現場で、今まさに実験されており、利用者・介護者から好評を得ています。
老後をロボットたちと共に過ごす時代は、もう目の前です。

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